ランブルスコの魅力とは?
楽しみ方やおすすめのワインも紹介

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世界的にブームとなっているランブルスコは発泡性の赤ワインだ。誰もが好きになる魅力的な果実味を持ち、軽やかな泡が心地よく、アルコール度数も低めなので、とても飲みやすい。どんな食事にも合うワインだ。初心者でも楽しめるし、通をも唸らせるランブルスコの世界をご紹介する。

目次

ランブルスコとは?

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ランブルスコはエミリア=ロマーニャ州のモデナやレッジョ・エミーリアを中心に造られる発泡性の赤ワインだ。使われる黒ブドウがランブルスコだが、ランブルスコには100種類近い種類があり、それぞれ味わいが異なる。ランブルスコ協会が選んだ主なものは12種類(ソルバーラ、グラスパロッサ、サラミーノ、フォリア・フラスタリアータ、バルギ、マエストリ、マラーニ、モンテリッコ、オリーヴァ、ヴィアダネーゼ、ベネッティ、ペッレグリーノ)で、何世紀にもわたりエミリア=ロマーニャ州で栽培されてきた。ランブルスコは野生品種が起源だとされていて、今でも少し山ブドウに近いシャープな酸(特にソルバーラ種)を感じさせるところがある。ソルバーラやグラスパロッサのように主に単一品種で醸造されるものもあるが、いくつかの種類のランブルスコをブレンドすることも多い。

ランブルスコには辛口から甘口まで、ロゼのような色のものから濃厚な紫色のものまで、様々なタイプがあり、香りも味わいも多様だ。共通しているのは、フルーティーで、親しみやすく、爽やかな泡が魅力的で、アルコール度数が低く、飲みやすい赤ワインであるという点だ。しかも価格がとてもお手頃なので、初心者にも人気が高い。ただ決して平凡なワインではなく、著名なガンベロ・ロッソ・イタリアワインガイドの最高評価であるトレ・ビッキエーリを獲得することもしばしばで、ワイン通をも魅了している。

基本的にはほとんど(95%)がフリッツァンテと呼ばれる微発泡性だが、最近は瓶内二次発酵によるスパークリングワインの評価も高くなっている。また瓶内二次発酵で生じた澱を除去せずに収穫翌年にそのまま販売するアンチェストラーレという昔ながらのやり方のランブルスコも根強い人気がある。

その歴史は古く、すでに紀元前10世紀にランブルスコの祖先とされる野生品種がエミリア地方で栽培されていたとされる。古代ローマのヴェルギリウスやカトーもこの地方で栽培されるLambrusca Vitisという品種に言及していて、大プリニウスはエミリア街道沿いの産地で優れたワインが生産されていることを述べている。この辺りを支配した中世の女傑でトスカーナ女伯だったマティルデ・ディ・カノッサも微発泡性のランブルスコを法王に贈っていたとされる。ルネッサンス期になると今のランブルスコに似たワインが定着し、18~19世紀には微発泡性ワインの醸造技術、瓶詰方法も洗練される。

20世紀に入ると国際的知名度も高まり、多くの生産者協同組合が誕生、生産量も増加した。1970年にはランブルスコ・ディ・ソルバーラLambrusco di Sorbara、 ランブルスコ・サラミーノ・ディ・サンタ・クローチェLambrusco Salamino di Santa Croce、ランブルスコ・グラスパロッサ・ディ・カステルヴェートロLambrusco Grasparossa di CastelvetroがD.O.C.に認められた。1970~80年代にかけては甘口のランブルスコがアメリカで大成功を収める。そのため外国ではランブルスコといえば甘口というイメージが根付いたが、地元では辛口のランブルスコが常に食卓で飲まれてきた。手頃な価格であるためにシンプルなワインと誤解されていたランブルスコの真価が正しく認められるようになったのは1990年代以降で、特に2000年以降は国内外で大ブームとなった。スパークリングであるプロセッコを別とすれば、ランブルスコは最も多く輸出されているイタリアワインで、イタリアの家庭で消費されるワインのトップ3に入っている(あとの2つはキアンティとモンテプルチアーノ・ダブルッツォ)。

地元住民のランブルスコ愛も目覚ましいものがある。モデナやレッジョ・エミーリアではワインといえばランブルスコしか考えられないという人も多い。モデナ出身のテノール歌手ルチアーノ・パヴァロッティは世界中の公演に必ずランブルスコを持参したといわれるし、同じくモデナ生まれのエンツォ・フェッラーリもランブルスコを愛飲していた。世界的に大成功を収めているランブルスコだが、地元に深く根付いたワインでもあるのだ。

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ランブルスコの産地

ランブルスコの代表的な産地はエミリア=ロマーニャ州のモデナとレッジョ・エミーリアである。ピアチェンツァとボローニャを結ぶエミリア街道は美食街道として知られ、モデナ、レッジョ・エミーリア、パルマ、ボローニャといった美食の街がいくつも並ぶ。パルマの生ハム、サラミ、クラテッロ、パルミジャーノ・レッジャーノチーズ、モデナの伝統的バルサミコ酢など世界に冠たる高品質食材の宝庫として知られる地域だ。卵入手打ちパスタを使ったタリアテッレ、トルテッリ、ラザーニャ、茹でて食べる大きな豚ソーセージであるコテキーノやザンポーネなどの名物料理も有名だ。エミリア街道の周りには肥沃なポー平原が広がり、畜産業も盛んだ。 この辺りはイタリアで経済的に最も豊かな地域の一つで、世界的に知られる自動車工業(フェッラーリ、マセラティ、ランボルギーニ、ドゥカーティなど)、食品工業があり、優れた中小企業も数多く活動している。住民は働き者だが、人生を楽しみ、謳歌することにも情熱を持った人たちで、トラットリアやレストランは常に賑わっている。歴史的遺産も数多く残り、文化レベルも高い。そして豊かな食材に恵まれた美食を常に支えてきたのがランブルスコというわけである。 

ランブルスコの魅力

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ランブルスコの魅力はなんと言ってもその親しみやすさだ。気取ったところがなく、気軽に楽しめるし、品質が安定している。しかも飲み飽きることがない。辛口から甘口まで様々なタイプがあるので幅広い料理に合う。常に冷蔵庫に入れておくととても重宝する。

いちご、チェリー、フランボワーズ、プラムなどを感じさせるフルーティーな香りはイキイキとしていて、バラやスミレのフローラルなニュアンスが繊細さを与えている。口中でも純粋な果実味が印象的で、タンニンはやさしく、酸がしっかりしているが、果実の甘みがそれを和らげてくれるので、全体的に爽やかな印象を与える。

価格もお手頃なので家飲みにも適しているし、親しい仲間と集まったパーティーなどにも最適だ。ランブルスコはそれがあるだけで楽しい時間を演出してくれるとても陽気なワインである。

価格がリーズナブル

ランブルスコは価格がリーズナブルだが、それには正当な理由がある。 まずランブルスコのほとんどの種類が多産で、大きな房が大量に実り、しかもある程度の量を生産しても品質が落ちない。産地のポー平原は肥沃な土壌なので生産量は多くなり、ワインの価格を抑えることができる。産地のほとんどが平野部にあるので、丘陵地帯と比べて農作業が楽で、栽培コストが低いことも重要だ。このような自然条件に恵まれ、ランブルスコはお手頃価格を実現できるのである。

また大きな生産者協同組合がうまく機能していることも重要だ。20世紀初めに各地に誕生した生産者協同組合が合併を繰り返して、大きな生産者協同組合に成長したため、資本が潤沢で、技術力が高く、品質が安定しているだけでなく、規模のメリットをいかしてコストを抑えることが可能なのだ。

幅広い料理に合わせやすい

ランブルスコは幅広い料理に合わせることのできるワインである。辛口から甘口まで、弱発泡性、スパークリングワイン、アンチェストラーレなど様々なタイプがあるので、どんな料理にも対応できる。例えば生ハム、チーズ、ナッツ、ポテトチップなどをつまみながらアペリティフにはやや甘口がいいし、濃厚な煮込み料理などには辛口のものが合う。甘口といっても甘い果実味を感じさせるだけで、甘ったるいことはないので、中華料理やエスニック料理との相性も抜群である。辛口の瓶内二次発酵スパークリングだと魚のカルパッチョや鮨、天麩羅とも最高だろう。

ランブルスコの中には格付け認定されているワインも

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ランブルスコにはD.O.C.に認定されているものもあり、それぞれが明確な規則を持っている。D.O.C.としてはモデナ県にはランブルスコ・グラスパロッサ・ディ・カステルヴェートロ、ランブルスコ・ディ・ソルバーラ、ランブルスコ・サラミーノ・ディ・サンタ・クローチェ、モデナの4つがあり、レッジョ・エミーリア県にはコッリ・ディ・スカンディアーノ・エ・ディ・カノッサ、レッジャーノの2つがある。D.O.C.を名乗るランブルスコは現在約5700万本生産されている。それ以外にI.G.T.エミーリアでもランブルスコを造ることが可能で、こちらは1億本を超す生産量だ。

ワインの甘さの表示については、残糖に関してセッコSeccoが0~15g/l、セミセッコ SemiseccoまたはアッボッカートAbboccatoが12~35g/l、アマービレAmabileが30~50g/l、ドルチェDolceが45g以上となっているので、甘さを知る目安となる。

ランブルスコの楽しみ方

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ランブルスコは万能なワインなので、どんなTPOでも力を発揮する。チャーミングな果実味を持ち、やさしい味わいなので、ワインだけを飲んでも美味しい。午後のおしゃべりタイムにナッツをつまみながら飲むやや甘口のランブルスコも楽しい。もちろんアペリティフとしても最高で、やや甘口のものでも、辛口のものでも、おつまみにとても合う。本格的な食事と楽しむなら辛口やアンチェストラーレがいいだろう。濃厚な肉料理や中華と楽しむなら少しタンニンが強いグラスパロッサがいいかもしれない。食後に甘口のランブルスコをチーズやチョコレートと楽しむこともできる。ランブルスコを楽しむのに難しい理屈はいらない。飲みたいときに、食べたい料理と楽しめばいいのだ。

ランブルスコのおすすめの飲み方

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ランブルスコは赤ワインだが冷蔵庫で冷やしてチャーミングな果実味を楽しみたい。タンニンがやさしいので、温度を下げても渋く感じることはない。食卓に置いておくと温度が上がっていき変化を楽しめる。生ぬるく感じるようだとまた冷蔵庫に入れて少し冷やすとキリッと引き締まる。

グラスは白ワイングラスでも、赤ワイングラスでもいいが、大きすぎないものがいいだろう。現地ではコップで飲んでいる人もいるが、それでも美味しい。 若いワインなので、抜栓してもちゃんと蓋をして冷蔵庫に入れておけば、2~3日は全く問題なく楽しめる。その意味でも使い勝手のいいワインである。

ランブルスコに合う料理

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ランブルスコはタンニンがやさしいので繊細でデリケートな料理にも合うし、泡が口中をリフレッシュしてくれるので濃厚で脂っこい料理にも合う珍しいワインだ。 やや甘口なものでも、辛口のものでもアペリティフとして楽しめる。生ハム、サラミ、クラテッロ、野菜のピクルス、パルミジャーノ・レッジャーノなどのチーズとの相性はとてもいい。

やや甘めのランブルスコは居酒屋メニューとよく合う。枝豆、ポテトサラダ、鰹のたたき、イカのゲソの南蛮漬け、鰻、鶏の唐揚げ、豚の角煮など幅広くマッチする。また中華料理やエスニック料理との相性も抜群だ。特に酢豚、回鍋肉、青椒肉絲などの脂っこい料理によく合う。生春巻き、タンドリーチキンなどスパイシーな料理も見事に受け止めてくれる。

辛口のランブルスコは定番イタリアンのカルボナーラ・スパゲッティ、ラヴィオリ、ラザーニャ、ミラノ風カツレツと最高だし、コテキーノやザンポーネ、牛ホホ肉の煮込みなどこってりとした地元料理にも合う。また酸がしっかりしているので、豚カツやコロッケといった揚げ物ともいいだろう。

意外に合うのがピッツァで、特にアンチェストラーレは最高だ。トマトソースとの相性がいいのでシンプルなマルゲリータもいいが、魚介類をのせたピッツァでも、サラミや肉を載せたものでもどんなタイプのピッツァでもOKだ。

とにかく合わない料理を見つけるのが難しいぐらい柔軟性のあるワインである。

おすすめのランブルスコ3選

ドネリ
ランブルスコ・レッジャーノ・アマービレ
/750ml

1,645円 (税込)円

商品コード:7191

魅力的な果実味を持つ中甘口のランブルスコ。ほどよい甘みがあり、タンニンがやさしいので、赤ワインが苦手という人にもおすすめ。しっかり冷やしてアペリティフとして、生ハム、サラミ、チーズをつまみながら楽しむのも最高。豚肉のステーキにパイナップルを添えたもの、鴨のオレンジソース。酢豚ともいい。やや甘口のランブルスコの魅力を十分に伝えてくれるワイン。

ドネリ
ランブルスコ・ディ・モデナ セッコ
/750ml

1,684円 (税込)

商品コード:27691

ダークチェリー、赤い果実のフルーティーな香り。酸がしっかりとした爽やかな味わい。サラミ、生ハム、ミートソースの手打ちパスタ、ラヴィオリなどは定番。餃子、春巻き、回鍋肉、豚カツ、串カツなど少し脂っこい料理とも合う。筑前煮、肉じゃがといった家庭料理とも見事にマッチする。まさに万能ワインだ。

ガヴィオリ
ランブルスコ・ディ・モデナ・アンチェストラーレ 2022
/750ml

3,195円 (税込)

商品コード:27669

フレッシュな赤い果実やいちごの香り。繊細で、みずみずしい辛口。デリケートなパルマの生ハム、クラテッロとは最高の贅沢。鰺や鰯の南蛮漬けにも合う。春野菜のフリットやアスパラのオムレツとも。酸がシャープだが、どこか温かい手作りの味わいを感じさせ、とても魅力的。

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ランブルスコは地元で熱烈に愛され、外国でも人気が高い赤ワインだ。気取らず、手軽に楽しめ、フードフレンドリーで、飲み飽きない。あまりに人気が高いので、ランブルスコ協会も今まではあまりプロモートに熱心でなかったが、今年からランブルスコの魅力を世界に発信することにした。6月21日を「ワールド・ランブルスコ・デイ」に決めて、世界の重要都市でイベントを開催していくそうだ。今年はパリのエッフェル塔で試飲会とディナーが行われ、来年はニューヨークで開催される予定。いずれは東京での開催も考えているとのこと。

濃厚なワインのブームが去り、日常生活に豊かさを与えてくれるワインが求められている今、世界がランブルスコに注目している。

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