グラッパはどんなお酒?
楽しみ方や選び方から
おすすめのグラッパまで徹底解説!

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イタリアの国民的蒸留酒グラッパ。芳しいアロマと個性豊かな味わいが愛好家を惹きつけている。ブドウ品種、蒸留方法、熟成方法により様々なタイプが生まれ、色々な楽しみ方をすることができる。グラッパの深い魅力をご紹介しよう。

目次

グラッパとは?

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グラッパと表記できる基準

グラッパはブドウの搾りかすを原料として造られる蒸留酒だ。グラッパを名乗るにはイタリアで栽培されたブドウの搾りかすをイタリアで蒸留する必要がある。ワインと同じく原産地が保護されているのだ。イタリア以外でもブドウの搾りかすから蒸留酒を造ることは可能だが、グラッパは名乗れない。

ブランデー、ウイスキー、フルーツブランデーなどは液体(または液体と固形物が混ざったもの)を蒸留するが、グラッパは搾りかすという固形物を蒸留するので、他の蒸留酒とは異なる蒸留設備が必要だ。それぞれの蒸留所が工夫して独自の蒸留設備を作りあげているため、同じ原料を使っても蒸留所によって全く異なるグラッパが生まれる。この手作り感もグラッパの魅力である。

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グラッパの歴史

蒸留の歴史は古く、古代メソポタミアにまで遡る。それがアラブ世界からヨーロッパに伝えられ、中世においては錬金術の一環として蒸留が行われた。当時の主な目的は蒸留酒を造ることよりも、薬や精油を造るためのアルコールを得ることであった。アルコール飲料としてのグラッパが生活に根付くのは中世末期以降だ。貴族や金持ちがワインやワインを蒸留したブランデーを楽しんでいたのに対して、ブドウの搾りかすといういわば廃棄物から造られたグラッパは農民や庶民が手に入れられる唯一の蒸留酒であった。昔はそれぞれの農家が自家消費用のワインを造っていたので、蒸留所が簡易な蒸留器をもって農家を回り、搾りかすを蒸留するサービスを行うこともあった。ブドウの搾りかすはアロマが豊かで素晴らしい原料だが、傷みやすく、すぐに蒸留しないと嫌な香りや味わいが出やすい。蒸留も簡単ではなく、技術が低かった時代は焼き付くような強い味わいの攻撃的なグラッパが多かった。そのため貧しいアルコール飲料としてやや蔑まれていたが、庶民にとっては唯一手に入る蒸留酒だったので、寒さが厳しい北イタリアを中心に愛されるようになった。北イタリアの庶民にとってグラッパは万能薬で、冬の農作業に出かける前に一杯引っかけて体を温めたり、兵士は戦闘前に勇気を出すためにグラッパをあおったりしていた。風邪気味だと温めたグラッパを飲んで治療したり、歯が痛いとグラッパを鎮痛剤代わりに使ったりもしていたのだ。

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喜びを与えてくれる美味しい飲み物という地位をグラッパが獲得したのは、ようやく1970年代になってからだ。最大の功労者はフリウリのノニーノ蒸留所である。安酒グラッパという誹謗中傷にうんざりしていたベニート・ノニーノと妻ジャンノーラは、グラッパはコニャックやアルマニャックと肩を並べる高貴な蒸留酒たりうると強い信念のもと、1973年に単一品種で高品質グラッパを蒸留することを決意する。それまでは全ての品種の搾りかすを一緒に蒸留するのが伝統だったが、ノニーノは高い価格を提示して、甘口ワインとして有名なピコリットの搾りかすだけを別に手に入れた。できあがったピコリットのグラッパは香り高く、清らかで、優美なものだった。ノニーノは品質の高さに相応しい手作りのヴェネツィアン・グラスの優美なボトルに瓶詰し、自らがサインしたタグを付けて販売した。それまでは厚手の大瓶で売られていた安酒グラッパのイメージを大転換させたわけだ。高度成長を終えて豊かになり、高品質の蒸留酒を求めていた消費者にノニーノのグラッパは徐々に受け入れられていく。高品質を目指す蒸留所も各地に誕生し、グラッパは以前のような庶民の栄養源ではなく、一流レストランでも消費される高品質蒸留酒へと変身したのである。

ノニーノのもう一つの大きな功績は1984年に「ウーエ」を生み出したことだ。これはブドウの搾りかすではなく、発酵させたブドウ果汁、果皮、種子を蒸留するもので、アクアヴィーテ・ドゥーヴァ(ブドウ蒸留酒)に分類される。「ウーエ」はグラッパのような力強さと堅固さはないが、ブドウ本来のアロマと味わいが純粋に感じられ、よりデリケートである。グラッパに似てはいるが、また異なる個性を持ち、イタリア蒸留酒の新たな地平線を切り開いた。

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ブランデーとの違い

ブランデーはワイン、グラッパは搾りかすを蒸留したものだ。ワインは安定して保存できるの対して、搾りかすは傷みやすい原料なので、できるだけ早く蒸留する必要がある。昔は集めた搾りかすを敷き詰めてビニールシートで包み、重しを載せて保管していたが、劣化は避けられず不快な香りや味わいの原因となっていた。高品質を目指す蒸留所は複数の蒸留器を同時に稼働させて、その日のうちに蒸留を終えるようにしている。ブランデーは長い樽熟成を行うので、琥珀色となり、樽熟成からくるバニラ、カカオ、ドライフルーツなどの複雑なアロマを持つ。一方、伝統的グラッパはステンレスタンクで数ヶ月休ませるだけなので色も透明で、グラッパ・ビアンカ(白いグラッパ)と呼ばれている。グラッパはブドウ本来のアロマがストレートに出るので、使われる搾りかすの品質が何よりも重要である。その意味でよりワインに近い蒸留酒といえる。ただ最近は樽熟成させたグラッパも増えている。

フランスのマールもブドウの搾りかすを原料にしていて、基本的な製法はグラッパと同じだ。イタリアで造られるとグラッパ、フランスで造られるとマールと呼ばれることが法律で定められている。

グラッパの楽しみ方

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食後酒として楽しむ

食後酒としてストレートで楽しむのが飲み方の定番だ。食後に飲むと消化を助けるとされている。グラッパの豊かなアロマと味わいを楽しむには一気に飲むのではなく、ゆっくりと時間をかけて楽しみたい。グラッパ・ビアンカは小さめのチューリップ型(下半分が膨らんでいるものだと香りが凝縮される)のグラスで、樽熟成をしたグラッパはバルーン型のグラスで楽しむ。温度が大切で、グラッパ・ビアンカは10度前後のやや低めの温度の方が芳しいアロマとスッキリとした味わいが引き立つ。樽熟成させたグラッパは16度前後で複雑なアロマやなめらかな口当たりを楽しみたい。温度が高くなりすぎると、アルコールが表に出るので気をつける必要がある。イタリアのトラットリアなどでは会計を終えた後にオーナーがグラッパを持ってきて、ご馳走してくれることも珍しくない。グラッパは感謝や歓迎を示す人情味溢れる食後酒でもあるのである。

エスプレッソと組み合わせる

コーヒーとの相性もいい。イタリアではエスプレッソにグラッパを混ぜて飲む人が多く、カフェ・コレットと呼ばれる。グラッパを入れると、エスプレッソが香り豊かで、パンチのきいた大人の味わいとなる。レゼンティンと呼ばれる飲み方は、エスプレッソを飲み干したカップの底に残っている砂糖にグラッパを注いで飲むというものである。ほのかにコーヒーの風味がついて、甘くなったグラッパはとても美味しい。カフェ・プロフマートは、エスプレッソにスプレーでグラッパをかけて楽しむというものだ。グラッパ・コン・モスカはグラッパにコーヒー豆を3粒ほど浮かべて火をつけ、しばらくしたらそれを消して楽しむ。アニス風味のリキュールであるサンブーカでもよく行われる飲み方だ。かすかにコーヒー豆の風味がついたグラッパも魅力的で、ヴィジュアル的にもとても楽しい。

カクテルとしてアレンジする

昔のグラッパは癖が強すぎてカクテルには向かないとされていたが、ノニーノ以降のクリーンで香り高いグラッパはカクテルとしても活躍している。ジントニックのジンの代わりにグラッパを使うというシンプルなカクテルにはモスカートやマルヴァジーアといったアロマティック品種のグラッパ・ビアンカがおすすめだ。グラッパ・エスプレッソ・マルティーニはグラッパ、エスプレッソコーヒー、コーヒーリキュール、シロップを氷とシェイクしてマルティーニ・グラスでサーブする。食後に最適なカクテルだ。ロンドンのリッツ・ホテルのバーテンダーがノニーノ家の次女に捧げたアントネッラというカクテルはリモンチェッロ、アマレット、ガリアーノにグラッパを入れてシェイクし、氷を入れたグラスに注いで、レモンの皮を添えるというとても地中海的なカクテルだ。イタリアで大流行しているスプリッツの変化球として、氷を入れたグラスにグラッパとプロセッコを注いでライムを添えるといったようなシンプルなカクテルも楽しめる。これはグラッパによって味わいが異なるので、色々と試してみるのも面白いだろう。難しいルールに縛られず、気軽に色々と試すのがイタリアらしいグラッパの楽しみ方である。

チョコレートとの相性も抜群

チョコレートとの相性も抜群で、特に熟成グラッパは最高だ。蒸留所の中には自分の熟成グラッパに合うチョコレートをつくらせているところもあるし、ウイスキーボンボンならぬグラッパボンボンを販売しているところもある。ホットチョコレートにグラッパを注ぐと体が温まり、寒い冬の日に最高だ。

グラッパの選び方

グラッパ6

様々なタイプがあるグラッパの中から、どのように自分に合ったグラッパを選べばいいのだろう。

好みの飲み方で選ぶ

ストレートで楽しむ時は品種で選ぶといいだろう。特にグラッパ・ビアンカは品種の特徴が出やすい。香り高いモスカートやマルヴァジーア、洗練された味わいのシャルドネ、デリケートなピノ・ネーロ、やわらかいメルロー、フルーティーなバルベーラ、厳格なネッビオーロなど、必ず自分の好みに合うグラッパが見つかるだろう。エスプレッソに入れて使う場合は少しパワフルなグラッパがおすすめで、熟成グラッパを使うと深みが出て、高級な味わいとなる。カクテルの場合はアロマや爽やかさを与えたいならアロマティック品種のグラッパ・ビアンカ、ボディーや骨格を与えたいなら熟成グラッパがいいだろう。

香りや味わいで選ぶ

香りを重視するならモスカート、マルヴァジーア、ゲヴュルツトラミネール、ブラケットなどのアロマティック品種のグラッパがいい。これらは味わいも軽やかなので、フュージョン料理やエスニック料理の食後にもいいだろう。重厚な地元料理を楽しんだ後はしっかりとした味わいのグラッパが相応しい。複数の品種をブレンドして造られる伝統的タイプのグラッパはアルコール度数もやや高めで、ガツンとくる力強い味わいのものが多いので、脂っこい料理の後に飲みたくなる。食後にサロンに移って歓談する場合は熟成グラッパをチョコレートと楽しみたい。熟成グラッパはシガーとの相性も抜群である。

用途で選ぶ

デザイン王国イタリアに相応しくグラッパのボトルは多彩だ。ノニーノのフラスコ型ヴェネツィアン・グラス瓶は高級感に溢れ、上品なのでギフト用にも最高だ。モダンで斬新なデザインのボトルに入ったグラッパはパーティーなどにも花を添えてくれる。船の形のボトル、星座のボトル、ピサの斜塔の形のボトルなどの奇抜なデザインのものには品質が怪しいものもあるので、購入前にちゃんと蒸留所をチェックしておいた方がいいだろう。

おすすめのグラッパ4選

① 初めてグラッパを購入する方におすすめ

おすすめのグラッパ1

ノニーノ
グラッパ・モノヴィティーニョ・モスカート
/700ml

8,822円 (税込)

商品コード:9150

初めてグラッパを飲む人におすすめなのがアロマティック品種によるグラッパ・ビアンカだ。華やかな香りを持ち、飲みやすく、繊細なので入門編としては最適である。中でもモスカートは定番だ。ブドウ蒸留酒「ウーエ」も入門編としてはいいだろう。

② ストレートで楽しみたい方におすすめ

おすすめのグラッパ2

ノニーノ
グラッパ・クリュ・モノヴィティーニョ・ピコリット
/500ml

33,853円 (税込)

商品コード:9145

まさにグラッパ・ビアンカの最高峰。世界3大甘口ワインとされるピコリットの搾りかすを蒸留した高級グラッパ。価格は高いが頂点を知ることができる至高のグラッパ。日本市場で入荷することは稀だが、同じノニーノのグラッパ・モノヴィティーニョ・メルローもふくよかで、フルーティーで、ストレートで楽しむのに最適。

③ 香りを重視したい方におすすめ

おすすめのグラッパ3

ノニーノ
“ウーエ”アクアヴィーテ・モノヴィティーニョ・マルヴァジーア
/700ml

8,415円 (税込)

商品コード:9160

ブドウ蒸留酒であるウーエはグラッパよりさらに鮮やかにアロマが感じられる。マルヴァジーアならではの繊細な香り(ジャスミンの花、洋梨、アプリコットなど)と清らかな味わいは実に上品。

④ 熟成グラッパの魅力を知りたい方におすすめ

おすすめのグラッパ4

ノニーノ
グラッパ・リゼルヴァ・オット・アンニ(8年バリック熟成)
/700ml

26,925円 (税込)

商品コード:9154

厳選されたグラッパをブレンドして、フレンチオークのバリックと元シェリーの小樽で8年間熟成させた逸品。ドライフルーツ、ナッツ、カカオ、シナモンなどの魅惑的な香り。なめらかで、ビロードのような口当たり。長期熟成を経てもしっかりと筋の通った凜とした味わいが残るところがグラッパらしい。食後にチーズ、チョコレート、ナッツ、シガーなどと楽しんでも最高。熟成グラッパの魅力を知りたいなら是非この一本を。

ブドウの搾りかすを蒸留した庶民のお酒であったグラッパは、イタリア人の創意と工夫により高品質蒸留酒に生まれ変わった。職人的蒸留による均一化されない個性豊かな味わいが魅力だ。品種、産地、造り手の顔の見える蒸留酒であることが大成功の要因である。食後の楽しい時間を豊かにしてくれるグラッパは、安らぎのひとときを与えてくれる貴重なお酒である。

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