アマローネ・クラッシコとは?
ベルターニ社主催「ザ・ライブラリー」
マスタークラス・テイスティング 2023

伝統的なアマローネの造り手として、絶対的な存在感を持つベルターニ。1957年のファースト・ヴィンテージから現在まで44を誇る、数多くのヴィンテージコレクションから、マスター・オブ・ワインでありベルターニの醸造責任者兼COO(最高商務責任者)アンドレア・ロナルディ氏がチョイスした7つのヴィンテージを試飲するマスタークラス・テイスティングがロンドン、ミュンヘン、ヴェローナ、ニューヨーク、シカゴそして東京の5ヶ国6都市のみで開催された。2013、2012、2008、1994、1980、1973、7ヴィンテージを試飲しました

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アンドレア マスター・オブ・ワイン インタビュー
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目次

ザ・ライブラリーについて

アンドレアMW 本日はお集まりいただきありがとうございます。ベルターニのフラッグシップ、アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ・クラッシコ(以下アマローネ)の7つのヴィンテージを垂直試飲していただきます。このザ・ライブラリーというセミナーは、サザビーズのバイヤーだったニック・ジャクソンMWと共に進めたというプロジェクトです。ベルターニ社は創設100年の1957年に初めてアマローネを造りました。今まで44ヴィンテージのアマローネを造りましたが、そのうち35は今でも販売しています。今日試飲いただくヴィンテージは調和・豊かさ・デリケート・洗練の4つの特徴に分けました。是非このセミナーを通じて、ベルターニのアマローネについて理解を深めていただければと思います。

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ヴァルポリチェッラの産地特徴

「ヴァルポリチェッラは、ブルゴーニュ、シャンパーニュに次いで3番目に石灰土壌が多い産地です。鉄分の多い赤い石灰と、白い石灰の2つの土壌です。広さは約8000ヘクタールありますが、80ヘクタールの火山性土壌が混ざっています。そのうち25ヘクタールをベルターニが所有しています。ヴァルポリチェッラ地区にテヌータノーヴァレという素晴らしい区画があり、火山性土壌でブドウが栽培されています。その昔、古代ローマ人が農園を造り、それをベルターニが購入しました。当時はそこに泉があり、その水をヴェローナの街に運んでいました。今日飲んでいただくワインは、色が薄くて軽やかである、それにも関わらず長期熟成能力があるというのは火山性土壌由来です。スモーキー、燻製香、火薬のようなニュアンスと、塩味とミネラル感、これが特徴です」

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アマローネ・クラッシコ テイスティング

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■ 2013

「まずは2013年、色、香り、口当たりを感じてください。透明感のある明るいルビー色。最初から薄い色ですが、熟成を経てもほとんど退色していきません。香りですが、カンパリビター、オレンジ、ハーブなど、トスカーナやピエモンテで造られるワインにも同じニュアンスを感じることがあります。口の中に含むととても活力のある味わいです。酸がしっかりとあり、軽やかで、刀のように伸びていく持続性、塩味が感じられます。この塩味がまさにヴァルポリチェッラの特徴です。このあとに飲む2012と比較すると、2012のほうが開いていますが、2013のほうがバランス感、タンニンの質が良いです。現在我々は古い絵画を修復するような作業を行っています。絵画を修復するときは、絵画を書き直したりはしません、埃を除去したり洗浄することで、本来の姿が浮かび上がってくる、そういったヴィンテージが2013です。私がベルターニで働き始めたのが2012年の収穫からなので、初めて1年を通じて携わることができたヴィンテージです。今後どのようにベルターニのスタイルを守っていくかを教えてくれたのも2013です。昔ミケランジェロが絵画と彫刻の違いについて興味深いことを述べました。白いキャンパスに色を加えていく、足していくのが絵画、大理石から削っていく、余分なものを削ぎ落して造り出すのが彫刻。ベルターニのスタイルは彫刻です。このワインは一貫性があって、シャープで、切れ味があり、活き活きとしています。」

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■ 2012

「このヴィンテージを語るにおいて、重要な要素は気候です。一般的にワインの気候について語る際、重視されるのは4月~9月までの気候です。ところが、ベルターニにおいては9月~12月の気候が非常に重要です。アマローネを造るにあたり、ベルターニではブドウを「陰干し」しません、3ヶ月「休ませ」ます。窓を開ける、閉める以外のことはしません。除湿器を使わず竹で出来たゴザの上にブドウを並べて自然な形で行っているのは、今ではベルターニだけです。除湿器や扇風機、温度管理をしてアパッシメントの工程を行うのは容易いですが、毎年同じ環境・状況で、それではそのヴィンテージの特徴がワインに刻まれることはありません。ベルターニはアパッシメントの工程においても、そのヴィンテージを表現することにこだわっています。偉大なワイナリー、偉大なワインメーカーは、ヴィンテージの違いを物語ることが必要です。

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2012は2013と比べるとはるかに暑い年でした。ブドウの休息の時期は、温度も湿度が高かった。2013は乾燥していて、冷涼でした。それがアマローネにとって、とても良い条件で、偉大なヴィンテージとなりました。2012は貴腐のトーンが感じられ、濃厚で、熟した果実を感じられます。アマローネを語る3つ目の要素として、品種があります。ベルターニのアマローネは昔からずっとコルヴィーナ主体で造られます。

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■ 2008

「それぞれのヴィンテージが、世界のどのような偉大なワインを彷彿とさせるか。ヴァルポリチェッラのコルヴィーナはヴィンテージによってはフローラルな香りが強調されますが、それは熟成と共にドライフラワーのように変化していきます。それはまるでバローロのようです。試飲すると口の中にタイトに入ってきて、広がっていく2008はバローロを想起させます。

改めて2012を飲んでみると、meaty(肉っぽい)であり、血液、ヘモグロビンを感じさせるトーンがあります。そういった観点では2012はトスカーナのサンジョヴェーゼを彷彿させます。荒々しいニュアンスの多い年のブルネッロ・ディ・モンタルチーノのようです。

2013に戻っていただくと、ピノ・ノワールに似ているヴィンテージです。ピノ・ノワールとシラーの間くらいですね。ブルゴーニュの甘やかさと、コート・ロティの白胡椒のニュアンスです。

ベルターニのアマローネは一貫性があり、ラベルも一度も変わっていません。しかし、気候条件の変化に合わせて、スタイルを変えないためにも、ワイン造りに変化を加えています。温暖化の影響もあり、2013はアパッシメントの期間が初めて100日以下となりました。将来的には60日くらいまで短くする予定ですが、それはこのスタイルを守るための変化です。」

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■ 1994

「ロバート・パーカーjr.の影響力が強かった時代ですね。世界中の偉大なワインがバリックで熟成しないといけないと考えられていました。目標とするのはボルドーのワインです。このアマローネは不思議なことに、コルヴィーナであり、大樽熟成にも関わらず、なぜか94年はボルドーのニュアンスを感じます。今までのシルキーなタンニンではなく、刺々しいタンニン、ヨード、ミーティーなど。ボルドーの中でもサン・テステフに似ています。ベルターニは変わっていないにもかかわらず、このヴィンテージだけ特徴的なのは、ロバート・パーカーjr.が無意識に影響を与えていたのかもしれません(会場笑)。なんだかんだ一貫したスタイルと言いつつも、おそらく抽出が強かったのではと推測されます。現在では抽出を抑え、ルモンタージュもデレスタージュもしません。特徴としてはアルコール発酵のあと、長いマセラシオンを行います。」

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■ 1980

「この50年の中で最も冷涼なヴィンテージの1つで、収穫時に雪が降りました。85年も雪が降りました。イタリアでは非常に難しかった時代です。86年にメチルアルコールスキャンダル(※)というのもありました。

※メチルアルコールスキャンダル:イタリアで複数のワイン業者がワインに塗料用のメチルアルコールを混入させていた事件で、19人が死亡、15人が失明。イタリアワイン全体のイメージが低下し、輸出量も大幅に下落した。

ボリュームはあるが軽やか、なめらかで非常に飲みやすい。ベルターニのアマローネは基本的に食事と共に楽しんでいただきたいのですが、唯一ワイン単体で楽しんでいただきたいヴィンテージがあるとすれば1985です。このワインはエルミタージュに似ています。砂糖漬けのオレンジ、パネットーネの香り、シェリーのトーンも感じます。ベルターニのアマローネは、約8年間樽熟成していますが、その間に蒸発してしまうワイン、いわゆる「天使の取り分」は約2万5千本分に及びます。ソレラシステムのように、酸化しないため毎年少しずつ、新しいアマローネをつぎ足していくので、若々しさを保ち、複雑さが生まれます。このヴィンテージのように、古酒に入ってくると海藻や豆腐のニュアンスを感じます。

非常に還元的な環境で熟成させ続けるので、初めて酸素と触れあうのは抜栓後となります。いま試飲して頂いているワインを抜栓したのは1時間前ですが、グラスの中でどんどん変化していきます。ベルターニのアマローネは夕食で2時間楽しんでいただくために造られたワインでもあるのです。

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■ 1973

「非常に特殊なヴィンテージで、唯一ボトル差が激しいです。他のヴィンテージではボトル差が非常に少ないのですが、1973は非常に軽やかでデリケートなヴィンテージです。喜ばしく、シェリーのようで、海の塩味を感じます。肉料理より魚介料理に合わせたいですね。アマローネが、非常にフードフレンドリーであることを証明してくれる一本です。アマローネ=ステーキハウスという考え方はやめてください(会場笑)。シェリーのニュアンスを感じる、ソレラシステムに似たつぎ足しについて、昔からずっと続けていますが、これまでは長きにわたりずっと秘密にしていたようです。1年間で約5回つぎ足します。8~12%くらいが、新しいヴィンテージのワインが入っている計算です。ちなみに15%までは法律的に問題ありません。」

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■ 1964

「最後に飲んでいただく1964は、今まで飲んでいただいたヴィンテージのよい部分を持ち合わせています。すべてを持ち合わせたヴィンテージが2つだけあります、1964と1967です。現在59年熟成していますが、退色もあまり見られず、まったく老いを感じさせません。ベルターニのアマローネはシュール・リーの状態で8年も大樽熟成しているので、完全に安定しています。そのため退色がこれほどまでに少ないのです。オレンジ、リコリス、苦みを感じます。

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1957年に当時のオーナー、カヴァリエーレ・ベルターニがこのアマローネが生まれる農園を購入し、当時“レチョート”と呼ばれる甘口のワインを、辛口で作ることに決めました。当時はまだ辛口のアマローネが認知されておらず、1958年にファースト・ヴィンテージを造り始めてから25年間1本も売れませんでした。ようやく売れるようになったのが1987年頃です。当時のイタリアでは、バローロなどでもあった話ですが、ワインの買い手が見つかるまで、大樽で熟成しており、注文が入ってから瓶詰めしていたそうです。それなので1964は20年以上熟成しており、1973よりあとに瓶詰めされました。そういった背景もあり、1981~1990年の10年間に20年のヴィンテージを瓶詰めしました。幸運なのはベルターニに古いヴィンテージを残す習慣があったことで、今でも生産量の10%をライブラリーとして保有しています。しかも、全44ヴィンテージのうち35ヴィンテージは購入可能です。」

ベルターニ

7ヴィンテージの垂直試飲を終えて

私のマスター・オブ・ワインの卒業論文のテーマは「なぜ今ペルゴラ(棚仕立て)仕立てが復活しているか」でした。イタリア北部をはじめ、各地でペルゴラ仕立てが復活してきていますが、その理由を簡潔に述べるなら1番は気候変動・温暖化です。ベルターニの畑にも、世界中の生産者が見学に来ます。世界各地で今後も増えていくと予想されます。2番目に人手不足です。垣根仕立てと比べ、年間を通じて必要とされる労働力が平準になります。3番目に病害の問題です。密植のブドウ畑と比較し、ブドウの木が健康的と考えられます。以前はブドウにストレスを与え、苦しめることで、少量のブドウに凝縮させ、良いブドウができると考えられてきましたが、今は逆に健康的にのびのびと育てることが注目されています。

葡萄畑の写真

濃厚で残糖感の強いアマローネが好きな方にはベルターニはお勧めしません。軽やかで、華やかでありながら、ミネラル感や塩味があり、フードフレンドリー。ベルターニのスタイルは一貫しており、世界中の消費者がようやくこのスタイルを望んでくれるようになりました。アマローネは長期熟成能力が非常に高く、世界のファインワインと肩を並べることができます。私たちは非常に真面目に取り組んでおり、包み隠さず、このベルターニのスタイルを守り続けていきます。

編集後記

変化を恐れずスタイルを守り抜いていく、ベルターニの伝統的なアマローネ・クラッシコ。過去のヴィンテージを試飲していく中で、未来を見据えているように感じました。数多くのバックヴィンテージをご用意しておりますので、特別な日の1本に是非お楽しみください。

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サイン入りスペシャルワイン

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商品画像

ベルタ―二 アンドレアMWのサイン入り!アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ・クラッシコ 2012 限定3本 /750ml

18,000円 (税込)

商品コード:7155_3-5

完売いたしました

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