イタリアワインのバローロとは? 選び方やおすすめのバローロを紹介

イタリアワインの王様とも称され、偉大なワインとして知られる「バローロ」 幾多の変遷を経て、今なお人々を魅了して止まない赤ワインを様々な角度から掘り下げてご紹介させていただきます。

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イタリアワインのバローロとは

最初に、バローロとはどんなワインなのか?
その特徴や歴史、法規制などを確認しながら理解を深め、「飲んでみたい!」と思っていただけるよう順を追ってご紹介します。

目次

バローロってどんなワイン

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バローロの特徴

タンニンと酸味が個性であるネッビオーロ種のみで造られるバローロは、かつて長期熟成を経ないと飲むことに適さないワインといわれてきました。強固なタンニンが和らぐには時間が必要であり、生産者はそのタンニンと酸味をいかに落ち着かせるかを課題に思っていたようです。

現在ではブドウの生育度も高まり、醸造技術が進化したことによって、これらのコントロールを生産者の意図する方へ向けることが出来るようになりました。

また世界の消費者が、以前に比べて凝縮度や円やかさだけをワインに求めることなく、酸味やタンニンなどの味覚要素にも慣れて“個性”として楽しむようになったことから、伝統を踏襲したダイレクトな個性を若いヴィンテージから味わえるバローロが増えています。

このように人気の高まるバローロは世界市場での訴求率も高いことから、今後高騰が予想されますが、現段階ではその価格以上のクオリティを体感できる素晴らしいワインと言えるでしょう。

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バローロの歴史

前述したような特徴や現在の姿に至るまでには、多くの変遷がありました。その歴史を知っていただき、より興味の深まったところでバローロを楽しんでいただきたいとも思います。

現在造られるバローロの前身になると思われる「ネッビオーロワイン」の記述は、日本で江戸時代後期にあたる1700年代中頃から確認されています。当時からイギリスに輸出されていたワインは、1800年代中頃には世界的なコンクールで数々の栄誉を得ていました。この時代のワインは今のような辛口ではなく、気温や醸造技術の問題と消費者の好みもあって、やや甘みを感じる中辛口であり、中には微発泡しているワインも存在したようです。

時を同じくして1861年にイタリアが統一され、イタリア国初代首相となるカミッロ・カヴール伯爵がフランスの醸造家ルイ・ウダール氏を招聘。彼のアドバイスによる醸造技術の変化によって、ワインは中辛口ワインから長期熟成向き辛口赤ワインへと生まれ変わったのでした。

ここまで順風満帆にようにみえたワインストーリーは世界大戦後に陰りを見せます。1966年にバローロに制定されたワインは醸造技術が進化していく他国に比べ、貧困が続く国内では技術革新が進まず、いつしか市場の中で、時代遅れの飲みにくいワインと思われるようになりました。

そんな状況を打開しようと、意欲的な生産者が集まりブルゴーニュを訪れた際に、彼らは驚愕することとなりました。最新の醸造技術から生み出されたワインは洗練された上品な味わいであり、高値で取引されていたのです。その後イタリアに帰ってきた彼らは、これらの醸造技術を自分達のワインにも取り入れられないかと試行錯誤を繰り返します。その結果出来上がったバローロは今までのワインとは一線を画す素晴らしいワインだと賛辞を受け、彼らを「バローロボーイズ」として称える一方で、伝統的な味わいを損なったワインと考える人達との間に論争が起きます。これが1980年代頃からいわれた「伝統派VSモダン派」というバローロの歴史です。

現在、このキーワードはすでに過去のものとなり、世代交代が進むバローロの生産者達は伝統的に必要な技術に敬意を払いつつ、新しい技術などを取り入れた現代的なワイン造りに進んでいます。

バローロと表記するための条件

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1981年にイタリアのワイン法で最も厳しい規定であるDOCGに制定されます。

  • ネッビオーロ種100%
  • アルコール度数13.0%以上
  • バローロは収穫年の11月1日から最低38ヶ月熟成、うち18ヶ月は木樽で熟成させる
  • より熟成期間の長いバローロリゼルヴァは、収穫年の11月1日から最低62ヶ月熟成、うち18ヶ月は木樽で熟成させる
  • ピエモンテ州のクーネオ県にある11コムーネ(市町村単位)で生産が許されている
  • 2010年から181の特定クリュ(区画=MGA)名をラベルに表示できることになり、このクリュ名と同名でない伝統的な地名を畑名として表記も可能

これ以外にも、粘土質や石灰質といった土壌や標高170m~540mまでの丘陵地帯のみ、植栽密度やレイアウト、1ヘクタールあたりのブドウの最大収穫量、ブドウ畑の向き、ブドウの樹齢、ワイン生産量に加え、色や味わい、総酸度などを厳格に規定することで、高品質を維持しています。

近隣で生産されるバルバレスコとの違い

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バローロ生産地域からアルバ村を挟んだ北東部で生産されるワインがバルバレスコです。 一般的にバローロの弟分などといわれることもありますが、明確に生産区域は分かれており、条件にもいくつかの相違点が見られます。

  • 2つのワインはどちらも同じブドウ品種ネッビオーロ100%で造られるワイン
  • アルコール度数12.5%以上
  • バローロの最低熟成期間が38ヶ月(そのうち18ヶ月は樽熟成)に対して、バルバレスコは26ヶ月(そのうち9ヶ月は樽熟成)と、バルバレスコのほうが熟成期間は短めです。
  • ピエモンテ州のクーネオ県にある3コムーネ+1コムーネの一部で生産が許されている
  • 65の特定クリュ(区画=MGA)名をラベルに表示できることになり、このクリュ名と同名でない伝統的な地名を畑名として表記も可能

これ以外にも、粘土質や石灰質といった土壌や標高550m以下の丘陵地帯のみ、植栽密度やレイアウト、1ヘクタールあたりのブドウの最大収穫量、ブドウ畑の向き、ブドウの樹齢、ワイン生産量に加え、色や味わい、総酸度などバローロ同様厳格に定められています。 果皮や種子からの成分抽出であるマセラシオンの工程においてもバルバレスコの方が期間が短く、バローロと比べてタンニンや酸味は繊細で、エレガントな味わいに仕上がります。 バローロに比べて熟成速度も速く、より早い段階から楽しめるワインが多いのも特徴です。

バローロの選び方

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ここまでは特徴や歴史、法規制などワインの概要を紹介しましたが、ここからは内面的要素である個性や味わいを知っていただき、皆様のバローロ選びに役立ててほしいと思います。

熟成方法の違いで選ぶ

バローロの歴史についてお話をした際に、「伝統派VSモダン派」というキーワードがありました。 主に醸造方法の違いから生まれるワインスタイルのグループ分けを指していた言葉で、伝統派はセメントや大樽などでゆっくりと発酵や熟成をさせた厳格なスタイル、モダン派はロータリーファーメンターと呼ばれる抽出の優しいステンレスタンクや小樽を使い、酸やタンニンが円やかなスタイルに分けられていました。 現代的なワインは収穫年の個性や生産者の嗜好により、それらを使い分けて伝統的な厳格さを保ちつつ、エレガントなフィネスを持つワインを造る生産者がほとんどであり、このグループ分けは難しいかもしれませんが、キーワード的に「厳格VS柔和」なニュアンスは残っています。 どちらかと言えば近代的な技術を多用した柔和なバローロの方が飲みやすく、これからバローロを知っていこうという方にお勧めです。そのうえで、伝統的とは何かを探るように厳格なスタイルで造られるバローロをゆっくりと飲んでほしいと思います。ゆっくり飲む理由は、抜栓後にワインが本来の個性を発揮するまでに少し時間のかかる“寝起きの悪さ”が特徴であるので、その変化を確かめるような寛容さで楽しんでいただきたいです。

産地で選ぶ

バローロ生産区域にあたる11コムーネの中に5大産地と呼ばれるコムーネがあります。 ネッビオーロ種は土壌や天候など自然条件の影響を反映しやすいブドウ品種です。だからこそ、同じブドウ品種であっても産地ごとに個性は変化して、その変化に寄り添った醸造が施されることで、味わいに違いが生まれてきます。

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5大産地

① ラ・モッラ村

5大産地の中では、北西部に位置する標高の高いエリアです。地質年代も若く、十分な日照を得られる畑も多いので果実味豊かなワインとなります。その豊かな果実味を生かすために柔和な味わいになるような発酵と樽熟成の組み合わせが主流であり、親しみやすいバローロが多いので、初めてのバローロという方にお勧めできます。

② バローロ村

5大産地の中では、西部に位置するエリアです。地質年代も若めで粘土質の土壌が多く、ストラクチャーのしっかりとしたワインとなります。ラ・モッラ村とモンフォルテ・ダルバ村に挟まれるように丘陵の境になる場所も多く、陰影のある複雑さが生まれ、歴史ある伝統的な味わいを知るには欠かせないバローロです。 この村の入り口にあたるところにあるピラー社では、キアラ・ボスキス女史が前述の「バローロ・ボーイズ」とともにワインの品質向上を行い、現在でも環境に配慮した自然で瑞々しい華やかなバローロ造りを続けています。

③ モンフォルテ・ダルバ村

5大産地の中では、南部に位置するエリアです。地質年代は上記2村より古くなり、石灰質の土壌が増え、ミネラル分のしっかりとした華やかなワインとなります。南にいくほど標高は高くなり、涼やかな酸味が加わった上品な味わいとなるため、エレガントな味わいを求める方にお勧めのバローロが生まれます。

④ セッラルンガ・ダルバ村

5大産地の中では、東部に位置するエリアです。地質年代は生産区域内で最も古く、泥灰土と砂の混じる石灰の多い土壌です。南東部に行くほど標高は高くなり、村全体では酸やタンニンの凝縮した厳格な味わいとなりますが、多くの生産者が憧れを持つ偉大なワインが生まれる産地として、高品質バローロの多い村です。 バローロを語るうえで欠かすことの出来ない生産者ミラフィオーレとその流れを汲み村全体がクリュに定義されるフォンタナフレッダ社が存在します。伝統的な味わいを踏襲しつつ、新しい技術革新による現代的ワインを造り出す代表的生産者として是非お試しください。

⑤ カスティリオーネ・ファッレット村

5大産地の中では、北部に位置するエリアです。2つの地質年代がミックスされ、海性堆積土が層になる砂岩土壌が広がります。バローロ生産区域でみると真ん中に位置する村であり、標高が高く斜面の急な丘陵地でバランス感に溢れた瑞々しいワインが味わえます。華やかで親しみのあるワインでありながら、時間と共に変化して妖艶さのある芳醇な味わいも楽しめるバローロとしてお勧めです。

生産年で選ぶ

先にもお話したように、気候条件の影響を受けやすいブドウ品種だからこそ、ヴィンテージごとの個性も楽しむことが出来ます。

一般的に近年では、2016・2010・2007・2004・2001・2000・1996・1990・1989年が秀逸な年とされていますが、村や畑の場所により厳しい年の方が素晴らしいワインが生まれている生産者も多く存在します。

長期熟成が可能なワインだからこそ、バースデーヴィンテージや20歳や結婚記念日のお祝いなどお客様にとって大切な年を選ぶことも可能です。

またバローロは熟成させないと美味しくないという印象をお持ちの方もいらっしゃると思います。 もちろん熟成による味わいは素晴らしい個性を発揮しますが、現地でも現行ヴィンテージ2018年をすでに楽しんでいます。若いバローロだからこそ感じられる明確な個性も是非お楽しみください。

おすすめのバローロ5選

① 初めてのバローロ、親しみ易い果実感が好きという方へ

フォンタナフレッダ
バローロ
/750ml

7,491円 (税込)

商品コード:7133

いくつかの地域のブドウをバランスよくブレンドする典型的なバローロの味わいを知ることも出来つつ、若い状態でも十分に魅力を発揮できるワインです。しなやかな酸味やタンニン、すみれのような華やかな香りが魅力的で、お肉料理全般、焼いた青魚や味噌などとも相性がよいでしょう。

② ネッビオーロらしい酸味やタンニンがお好きな方へ

フォンタナフレッダ
バローロ・セッラルンガ・ダルバ
/750ml

9,510円 (税込)

商品コード:7779

厳格なワインが造られる地域らしい、しっかりとしたタンニンを中心とするストラクチャーのあるワイン。ただし現代的な造りのお陰で、若い段階でもそれぞれの味わいが溶け込んでおり飲みにくい印象はありません。和牛の炭火焼やほほ肉の煮込みなど、油脂やコラーゲンたっぷりな料理にも十分寄り添ってくれます。

③ 香り豊かで華やかなエレガンスバローロを求める方へ

ピラー
“ヴィア・ヌオーヴァ”バローロ
/750ml

17,241円 (税込)

商品コード:27159

ネッビオーロの個性でもある、ワイルドチェリーやすみれのような華やかな香りが印象的なワインです。女性オーナーが造るクリーンナチュラルワインであり、酸味やタンニンも非常にしなやかでバローロに描く厳格なイメージを一新させてくれるようなエレガントワインです。上質な白身肉やしゃぶしゃぶなどと合わせたくなる味わいです。

④ 凝縮した果実味や樽のニュアンスがある重厚なバローロがお好きな方へ

ラ・スピネッタ
カンペ・バローロ
/750ml

32,351円 (税込)

商品コード:27942

バルバレスコの生産者として著名ですが、バローロもクオリティが高く評価されています。 バリックの熟成を経たとても上品なタッチの中に、ブドウの旨味をふんだんに凝縮した果実味が広がります。タンニンにも柔らかさが感じられ、フルボディでありながらもテクスチャーの素晴らしさからワインが進んでしまいます。和牛のステーキなど重厚な料理が欲しくなります。

⑤ 伝統を重んじた厳格さの現代の姿を知りたい方へ

ミラフィオーレ
バローロ
/750ml

13,744円 (税込)

商品コード:27194

バローロの原点であり、今も伝統的な味わいを踏襲しながら、現代的なエレガンスを併せ持つワインです。セッラルンガらしい厳格さや長い時間かけてゆっくり熟成されなければ出てこない複雑な旨味と余韻を存分に感じていただきたいと思います。ワイン単体やチーズを使った料理などとも相性が良いでしょう。

バローロというワインは、やや気難しく近寄りがたい印象を持っておられた方も多いかと思いますが、今回のコラムを読んでいただき、少しでも興味を持っていただけたのであれば、お勧めを参考に是非バローロを味わってください。

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