アスティとは? 楽しみ方からおすすめの選び方まで紹介!

アスティという名前は、イタリアワインに興味がある方であれば一度は耳にした事があると思います。街の名前でもあり、軽やかな甘口スパークリングワインの代表格として知られるアスティを深堀りしていきたいと思います。

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目次

アスティとは

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北イタリアのピエモンテ州で、現在のように赤ワインの名産地として知られる以前から造られてきた甘口のスパークリングワインは、近年法改正により辛口も認められるようになりました。8.0%ほどの低アルコールで軽やかな飲み口は多くの人を魅了して止みません。

アスティと認められる条件

ピエモンテ州にあるアスティ県、アレッサンドリア県、クーネオ県の3県にある52の村内で栽培される「モスカート・ビアンコ」と呼ばれる白ブドウのみで造られます。

大きく分けて4種類のワインがあり、そのほとんどはスパークリングワインです。

アスティ Astiもしくはアスティ・スプマンテ Asti Spumante
タンク内二次発酵による発泡性の白ワイン。アルコール度数6.0%以上。
2015年より、辛口タイプの製造も可能になった。
アスティ Astiもしくはアスティ・スプマンテ Asti Spumante (Metodo classico)
瓶内二次発酵による発泡性の甘口白ワイン。アルコール度数6.0~8.0%。
モスカート・ダスティ Moscato d’Asti
微発泡性の甘口白ワイン。アルコール度数4.5~6.5%。
サブゾーンとして「Canelli」、「Santa Vittoria d'Alba」、および「Strevi」が認められ、それぞれの規定を守ってワイン造りが行われる。
2014年以降、コルク栓のみで王冠タイプの栓は使用禁止。
モスカート・ダスティ・ヴェンデンミア・タルディーヴァ Moscato d’Asti Vendemmia Tardiva
ヴェンデンミア・タルディーヴァとは「遅摘み」を意味する。
収穫の時期を遅らせて、より熟すことで糖度が高くなったブドウから造る甘口白ワイン。
アルコール度数約11.0%。
ヴェンデンミア・タルディーヴァの果汁を濃縮することは出来ない。
全体として
  • 「モスカート・ダスティ」タイプから「アスティ・スプマンテ」メトド・クラッシコ(シャンパーニュ方式)タイプへの移行は認められない。
  • "extra", "fine", "scelto", "selezionato", "superiore", "riserva"などの表記は禁止されている。

アスティの歴史

現在でもとてもポピュラーなワインとして世界中に輸出されるワインですが、その起源は非常に古く1800年代半ばとも言われています。ワイン名にもなっているアスティという街は、ワイン文化が栄える前からヴェルモットや蒸留酒などの製造でとても有名でした。

また同時にワイン造りもランゲ地方より東に位置するアスティ県やモンフェッラート地区が中心となっていました。数件の生産者はワインを既に輸出しており、同時にフランスなどからワインを輸入する仕事もしていたのです。その輸入ワインの中心にあったのがシャンパーニュであり、当時は現在のような辛口が主流でなく、甘口のスパークリングワインだったようです。その甘口スパークリングワインに目を付けたのが、ヴェルモット造りなどで財を成していた生産者であり、アスティで代表的な白ブドウ品種となっていたモスカート・ビアンコ種を使い、“モスカート・シャンパーニュ”を造り始めたのです。

その後、ピエモンテの醸造学者フェデリコ・マルティノッティ教授は、カルロ・ガンチャ氏が考案した「モスカート・シャンパーニュ」の製法とは違う、ワインの二次発酵を加圧式のタンク内で醸造する「マルティノッティ方式」を考案します。この方式はその後フランスに伝わり、この方式を紹介したシャルマ氏の名前から現在の「シャルマー方式」と呼ばれるようになったのです。 マルティノッティ教授はアスティの醸造学校のディレクターをしており、代表的なブドウ品種であるモスカート・ビアンコはシャンパーニュ方式で醸造すると、そのフレッシュ感を保ったアロマや果実酸が失われてしまうと感じてタンク内方式を考案したのです。

そしてピエモンテ州では、マルティノッティ方式が主流となり、ワイン造りにおける質の向上と生産本数の増加によって、「アスティ」が世界で有名なワインとなっていきました。

アスティの著名生産者

歴史のところでも紹介したように、ワイン造りの中心はヴェルモット造りの生産者が中心となり始まりました。

① ガンチャ社

モスカート・シャンパーニュのワイン造りを確立させ、「イタリアスパークリングワインの父」とも呼ばれるカルロ・ガンチャ氏によって1850年に設立されました。 幅広い価格レンジのワイン造りを行っており、アスティはエキゾチックなフルーツ、セージ、ハチミツのような香りがあり、クリーミーで円やかな口当たりを持った甘やかさが魅力です。

② マルティーニ社

1800年代半ばに創業し、世界的に有名なヴェルモットのブランドへと成長していきました。 その後、ラム酒造りで著名なバカルディ社と合併してワイン製造も続けています。 マルティーニ社のアスティは、しなやかな酸味とキレのあるアロマティックな味わいが特徴で、デザート以外の食事とも相性が良いと思われます。

③ サンテロ社

現在当主のジャンフランコ・サンテロ氏の祖父によって第二次世界大戦中という困難な時期にブドウ造りを始め、ブドウ栽培とバルクワインの醸造を専門に行っていました。その後1958年にワイナリーを買収して自社生産を開始しました。「天使のワイン」で有名なアスティは酸味も穏やかで、甘味の強いジューシーな味わいが特徴。コストパフォーマンスに優れたワインは日本市場にも広く普及しています。

④ フォンタナフレッダ社

イタリア初代国王であるヴィットリオ・エマヌエーレ2世の子息が王から受け継いだ“冷たい泉”(fontana fredda)が湧く土地にワイナリーを設立し、第2次世界大戦後には現在のピエモンテ州の礎となるワイン造りを広める偉大な生産者です。フォンタナフレッダ社のアスティはブドウの味わいが強く、フレッシュ感を感じさせる酸味とアロマのニュアンスが抜群のバランス感を保つ完成度の高いワインです。

⑤ ラ・スピネッタ社

1977年に創業され、現当主でもあるジョルジョ・リヴェッティ氏が精力的に活躍するワイナリーであり、バルバレスコの生産者としても有名ですが、その始まりはアスティが世界的に評価されたところから始まりました。清涼感に溢れた瑞々しい果実味と伸びのある酸味がフレッシュさをより際立たせる上品な味わいのアスティを造り出します。

⑥ サラッコ社

1900年初めにルイージ・サラッコ氏がモスカートの栽培を始め、モスカート・ダスティをタンクごとネゴシアンに売り、果汁はヴェルモットの原料としていました。その後1988年に現当主であるパオロ・サラッコ氏が自社瓶詰めを開始しました。現在「モスカートの巨匠」と称される彼らのワインはブドウのポテンシャルが非常に高く、緻密で凝縮感のあるキレの良さが魅力で、アスティでは稀な長期熟成も可能なワインです。

アスティの楽しみ方

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アスティというワインの基礎的な事や、その歴史的変遷と代表的な生産者を知っていただいたら、このワインをいかに楽しむかを考えていきたいと思います。

アスティのおすすめの飲み方

アルコール度数も低く、清々しい酸味と若々しくアロマティックな果実味が魅力のワインであることから、必ず良く冷えた状態で飲んで欲しいワインです。

基本的に美味しく飲める温度帯は6~8℃位、微発泡を含めてスパークリングワインという個性があるのでフルートグラス(シャンパングラス)を使うのも良いですが、歴史的には社交界などから一躍有名となったクープグラスが甘口のワインに使用されてきました。

飲み口が広いために程よく泡抜けするので、炭酸が少し苦手だけど軽やかな甘口ワインが好きな方にはお勧めです。その他にチューリップグラスなど小ぶりのグラスでご自身の好みを探してみてください。

またイタリア国内でもカクテルに用いられることも多いワインです。フレッシュのフルーツジュースやココナッツのような甘みをもつ食材と共に作られるカクテルはバールやクラブシーンでよく見られ、アペリティーヴォ(食前酒)としても人気です。

アスティに合う料理

ワインはそのまま飲んでも十分に美味しいですが、何か一緒に合わせるものがあれば更に美味しくなるものです。組み合わせは辛口ワインよりも多種多様に渡り、そのいくつかをご紹介させていただきます。

  1. ① フレッシュフルーツを切って一緒に食べる
  2. ② グラスにフルーツを盛り、ワインを注いでフルーツポンチにする
  3. ③ 贅沢にメロンを半分に切って、真ん中の種を除いた部分にワインを注ぐ
  4. ④ 甘みと苦みの相対的な相性から、少し苦みを感じる食材や料理と合わせてみる
  5. ⑤ 甘みは辛みを和らげる作用があるので、エスニック的なスパイスの効いた料理と合わせてみる
  6. ⑥ かぼちゃの煮物やさつま揚げなど、みりんや砂糖の甘みが感じられる和食とも相性が良い

甘口ワインだとデザートと合わせるイメージが強いと思われますが、辛みや苦みなど様々な味わいの料理との相性を探るなど、アスティというワインをより身近に感じてお召し上がりください。

おすすめの選び方

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日本市場にも多く輸入され、価格幅も大きいワインを選ぶのは容易でないと思われます。 ラベルデザインから直感で選ぶのも一つの楽しみですが、ここではアスティ選びの判断基準をご紹介したいと思います。

~ワインのガス圧で選ぶ~

まずはほとんどのアスティワインが発泡性であるという特徴から、そのガス圧に注目してください。 残念ながらラベル表記にガス圧の表示義務はなく、外観からそのガス圧を知り得るのは困難です。ただし、一般的にはアスティ・スプマンテはタンク内発酵や瓶内二次発酵を問わず、モスカート・ダスティよりもガス圧が高く設定されています。

~酸味・果実味(甘味)・香りの強さとバランスで選ぶ~

フレッシュで爽やかなアロマと果実味が魅力のアスティワインでは、酸味や果実味、香りといった構成要素のどの部分を主体としてバランスを保っているかが味わいの特徴付けに大きな影響を及ぼします。酸味が主体であれば清涼感や切れ味が良くなり、果実味主体であれば凝縮感のあるブドウの旨味を味わうことが出来るでしょう。また香りを主体としたワインは比較的穏やかさや繊細さを保ちながら華やかな余韻を楽しめます。

~ワインの質感で選ぶ~

価格幅が広いワインだからこそ、カジュアルなワインから高品質なハイクラスワインまで質感も多くのバリエーションが存在します。その多くは価格と比例することが多いと思われますが、先に紹介した歴史的な著名生産者には熟練の技と、素晴らしいブドウ生育環境があることから、コストパフォーマンスに優れたワインが存在するのも事実です。ワインを飲むTPOに分けて、様々なアスティを飲み比べるのも楽しいでしょう。

おすすめのアスティ4選

ここまで様々なお話にお付き合いくださったみなさまに、お勧めしたいアスティをタイプ別にご紹介します。

① しっかりとしたガス圧があり、鮮やかな酸味と清々しさが好みの方は

フォンタナフレッダ
アスティ“パレット”ブルー
/750ml

2,879円 (税込)

商品コード:6891

充実したガス圧がありながらも、攻撃的な酸味ではないのでクリーミーな泡立ちが印象的です。 アルコール度数も低く、豊かな果実味が広がり、バランスの取れた酸味とキレのある後味が余韻となって持続します。しっかりと冷やして、シンプルにフルーツの入ったスポンジケーキやパンケーキなどと一緒にお召し上がりください。

② 穏やかな口当たりと、フレッシュ感あふれる果実味が好みの方は

フォンタナフレッダ
モスカート・ダスティ 2021
/750ml

3,096円 (税込)

商品コード:6150

微発泡性であることから、強い酸味を感じることはなく爽やかな果実酸が広がっていきます。 他のワインに比べて凝縮した果実味がワインに豊かさを与え、アロマティックな香りや味わいが華やかさとなって重なっていくのが魅力です。パッションフルーツを使った料理やエスニックのスパイシーな味わいにも好相性です。

③ しなやかな酸味、ミネラル感など華やかな味わいを求める方は

ラ・スピネッタ
“ブリッコ・クワリア”モスカート・ダスティ 2022
/750ml

4,088円 (税込)

商品コード:6881

生産者の名を世界に知らしめたワインという意味でも、イタリアでトップクラスのアスティワインとして評価されています。極めて繊細で華やかな酸味が基調となり、果実味は緻密でホワイトローズのようなフラワリーさが際立つワインです。デザートだけでなくフルーツを使ったリゾットや甘酢、ハーブの効いた料理とのペアリングにも可能性を感じます。

④ 熟成による凝縮した旨味や複雑味など、高品質なアスティを試してみたい方は

コントラット
デ・ミランダ アスティ 2017
/750ml

5,423円 (税込)

商品コード:6841

タンク内発酵であるためフレッシュ感を損なうことなく、その後もタンク内で2年程熟成を重ねることで熟した洋梨やハーブ、蜜のニュアンスが感じられ、ワインに溶け込んだミネラル分が旨味となってより一層複雑で優雅な余韻へと誘います。食前酒や軽い食後酒としてワインだけでも満足できる味わいであり、蒸した牡蠣や上質な魚の干物、西京焼きなど旨味の凝縮した料理とも楽しめる逸品と言えるでしょう。

まとめ

アスティ4

よく知られた名前のワインであり、甘口のカジュアルなイメージを持ってしまいがちなアスティですが、イタリアワインの歴史を作ったワインだからこそ、その魅力を深掘りしていくと未知の魅力と出会える可能性を持っています。食事に砂糖やみりんなど“甘味”を加える私達の食文化とも相性が良く、是非「デザートワイン」という枠を超えて様々な体験をお試しください!

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