ガンベロ・ロッソ2023年度版
ワイナリー・オブ・ザ・イヤー ベルターニ社
アンドレア マスター・オブ・ワイン インタビュー

イタリアでもっとも著名なワイン評価本の1つガンベロ・ロッソ誌の2023年版でワイナリー・オブ・ザ・イヤー(年間最優秀ワイナリー)に選出されたベルターニ。後にその功績によりカヴァリエーレ(=ナイト)の称号を与えられるベルターニ兄弟によって、1857年ヴェネト州ヴェローナのワイナリーとして設立され、高品質なワインを造り続けています。

風景の写真

そんなベルターニを現在率いる醸造責任者兼COO(最高商務責任者)のアンドレア・ロナルディ氏が2023年秋、プロモーションのため来日されました。アンドレア氏は2023年にマスター・オブ・ワイン(MW)の資格を取得。マスター・オブ・ワインは世界一難しいと言われるワインの資格で、その余りに高い難易度からワイン大国イタリアにおいてもモンタルチーノ在住のガブリエーレ・ゴレッリMWしかおらず、イタリア人としては史上二番目。そんなアンドレアMWに、ヴァルポリチェッラのテロワールや、近年のベルターニのワイン造り、マスター・オブ・ワインへの挑戦についてお話を伺いました。また、その翌日ベルターニが世界4か国のみで開催した、彼らのフラッグシップであるアマローネ・クラッシコを1964年から7ヴィンテージ垂直試飲を行うマスタークラス・テイスティング「The Library ザ・ライブラリー」が東京・銀座のブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティンで実施されたので、その様子もご紹介いたします。

編集部 Congratulazioni! Andrea MW!
まずはアンドレアさん、マスター・オブ・ワインの資格取得おめでとうございます。

アンドレアMWの写真

アンドレアMW ありがとうございます。

ガンベロ・ロッソのワイナリー・オブ・ザ・イヤー、マスター・オブ・ワインの取得など、アンドレアさんにとって、これ以上ないというほど素晴らしい評価と結果が出た年だと思いますが、改めてご感想をいただけますか。また、今後さらに狙っていきたい指標や、評価などはありますか?

アンドレアMW 3つ大きな出来事がありました。ガンベロ・ロッソのワイナリー・オブ・ザ・イヤーと、マスター・オブ・ワイン、そしてつい先日発表になりましたが、アマローネ・クラッシコ2013がドクターワイン(※)で100点を獲得し、最優秀赤ワインに選出されました。まだ我々が獲得していないタイトルとしては、ワイン・スペクテーター(※)のトップ100に選ばれることですかね。

※ドクター・ワイン:元ガンベロ・ロッソ編集長のダニエーレ・チェルニッリ氏が企画・運営するワインガイド
※ワイン・スペクテーター:世界的影響力を持つアメリカのワイン評価誌

インタビューの写真

非常に高評価が続いていますが、近年、ベルターニ社で変わったこと、逆に変わっていないことはありますか?

アンドレアMW ベルターニは、毎日気づかれないレベルでの小さな変化を続けています。ですが、大きな変化が明日試飲していただく2013年のアマローネです。アパッシメント(収穫した葡萄を陰干する工程)の期間が100日を切りました。凝縮感を抑え、より飲み心地の良いワインにしています。

収穫した葡萄の写真

それは近年のトレンドも意識していますか?

アンドレアMW いい質問ですね。ワインのスタイルを話すうえで、おそらく3つのカテゴリに分けられると思っています。1つ目はトレンディな、今流行しているワインですよね。ベルターニは、これであってはいけない。2つ目はコンテンポラリーな、現代的なワインです。土地や環境など、与えられた状況で最高なものを造っている。ベルターニは今このスタイルに一番力を入れています。ベルターニのワインでは、ソアーヴェであったり、オンニサンティやレ・ミニエーレが入ります。3つ目はクラシック、伝統的なワインです。ボルドーやブルネッロ・ディ・モンタルチーノ、アマローネなどですね。ベルターニのアマローネ・クラッシコはここに入るので、我々は2と3のスタイルでワインを造っている。流行に合わせているわけではありません。この3つのカテゴリはファッションや自動車でも、ブランドよってわけることができると思います。我々はベルターニというブランドを超越しない中で、コンテンポラリーでありクラシックなスタイルの中で少しずつ変化しています。

そのためには、全ての工程において詳細に管理していく必要があります。酸化は避けなければいけないし、土壌にも気候条件の変化についても深く理解しなければいけません。例えば、少しずつアルコール発酵の温度を下げて、マセラシオン(醸しの工程)の時間を長くしています。熟成庫の保管温度も現在は12度まで下げています。樽もフランス産から、より酸素供給量が低いスラヴォニア産に変え、樽での熟成期間を減らし、瓶内熟成の期間を長くしています。例えるなら有名な絵画の洗浄や修復をするように、少しずつ気づかれないように、本来の価値を引き出せるような作業です。

インタビューの写真

アンドレアMW ヴァルポリチェッラのエリアには、著名な3つのワインがあります。リパッソ(Valpolicella Ripasso D.O.C.)、アマローネ(Amarone della Valpolicella D.O.C.G.)、ヴァルポリチェッラ(Valpolicella D.O.C.)です。一番有名なのはアマローネですが、最も売れているのはリパッソです。2000年代に流行ったのは、凝縮感があるというか、甘くて果実味の強いスタイルでした。2010年代後半からは、より軽くてフレッシュで、塩味とミネラル感のある味わいが注目されてきました、こちらがベルターニ社の昔からのスタイルです。このスタイルが、アマローネやリパッソに共通してありましたが、ヴァルポリチェッラで表現したのがこの“レ・ミニエーレ”と“オンニサンティ”です。

新しいカテゴリを知っていただくために、説明すると、このスタイルはピノ・ノワール(ピノ・ネーロ)に似ているけど、ピノ・ノワールではない。これがベルターニのヴァルポリチェッラにあたると思います。ピノ・ノワールが好きな方には、是非試していただきたいワインです。

ワインと料理の写真

確かにレ・ミニエーレやオンニサンティからはラベルからだけでなく、その味わいからもブルゴーニュを彷彿とさせる、しかし違った表情のようなものを感じました。

アンドレアMW 私はPinot noir(ピノ・ノワール)+Philosophy (フィロソフィ=哲学)を組み合わせて「ピノソフィ」と呼んでいますが、これらのワインにイタリアでは、エトナのネレッロ・マスカレーゼやランゲのネッビオーロが入ります。寿司をはじめ魚料理や、伝統的な和食などの、料理との相性が良いですね。大事なことは飲むときの温度で、16~18度が理想です。世界ではボジョレーやロワールのカベルネ・フラン、スペインのガルナッチャ、チリのサンソーなどがピノソフィに入ります。冒頭でも述べた通り、高すぎないアルコール感とフレッシュさ、塩味とミネラル感という4つの観点ですね。

アンドレアMWの写真

ヴァルポリチェッラも「ピノソフィ」に分類されるわけですね。

アンドレアMW 今日はまた違った観点で、ワインをご紹介したいと思います。
「あなたはどんな人ですか?」
伝統的なものを好む方であれば、リパッソ。偉大でクラシックなものを好む方はアマローネ、バローロ、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ、キアンティ・クラッシコ・リゼルヴァ。好奇心が強い方は、ピノソフィのワイン。

「どんな時に飲みたいですか?」
毎日飲みたい方やランチタイムに食事と楽しみたい方は、こちらのヴァルポリチェッラ。フレッシュで軽めのほうがいいですよね。仕事のあとのハッピーアワーなどで、グラスで楽しみたい時はソアーヴェやリパッソ。特別な日、誕生日や記念日などではアマローネ。何か新しいものを試したいときや週末などは、オンニサンティやレ・ミニエーレ、ソアーヴェ・セレオーレなどを友人と楽しんでほしい。
私たちが生まれ育ったこの土地は、もともと高い品質のワイン造りを重要視していますが、更にお客様に興味・関心や好奇心を新しく抱いていただくためにも、オンニサンティやレ・ミニエーレのようなクリュ・シリーズをスタートさせました。

ワインの写真

マスター・オブ・ワインの資格に挑戦したことでアンドレアさんにどのような変化がありましたか?

アンドレアMW 2014年から勉強を始めました。変化は今日ご説明した中にも含まれていて、消費者のタイプや、ワインのカテゴリなども、勉強してきた中で考えてきたことです。資格取得の過程では、世界中のたくさんのワインを試飲してきましたが、例えば目の前にボルドーのワインがある、シャブリがあるとしたときに、なぜこれがボルドーなのか?なぜこれがシャブリなのか?を向き合って理解しなくてはならない。逆に自分たちが造っているベルターニのワインはどうなのか?なぜこれはヴァルポリチェッラなのか?グラスの中の液体が、ヴァルポリチェッラと理解できるのか?を問うようになりました。テロワールが正しく表現されていなければ、ただの飲み物になってしまう。ベルターニ社は私がマスター・オブ・ワインになるために、色々と協力してもらいました。自分が得てきた知識やノウハウをワイン造りに活かせたことに感謝しています。

近年日本でもJSAやWSETなどのワインの資格に挑戦する人が増えており、日本で生産する日本ワインも人気です。日本のワイン業界が盛り上がっている中で、日本の市場に何を期待しますか?

※JSA:日本ソムリエ協会、WSET:ワイン&スピリッツ・エデュケーション・トラスト。ロンドンに本部を置く酒類教育機関

アンドレアMW ワインにおいて、すごく良いことだと思います。WSETの記事でもよく目にするので毎回驚かされます。WSETなどのシステムのおかげで、ワインについて理解している人が増えたと思います。例えばこれまでは「あのワインよりこのワインの方が好きだった、似ていたよね」という感想だったのが「リースリングはヴェルディッキオに近いよね」とか、「ボルゲリはボルドーに似てる」など、消費者の方が自らワインの違いや特徴を理解して、SNSなどでレビューをしたり共有をして、広く伝わるようになったと思います。

アンドレアMWが記したメモの写真 アンドレアMWが説明のために記したメモ

アンドレアMW 昔はエノテカ(ワイン屋)に行くと、ワインに詳しい店の親父が「これが美味しいから、これもってけ」って勧める、これは古い時代のやり方。
「誰と飲むの?その友人はワインが好き?何を食べるの?」「ああ、彼女はシャブリみたいな白ワインが好きで、今夜はお肉を食べるんだよね」「それだったら~」というのが、現代の提案方法。いつ、誰と、どのようにワインを飲みたいか。シチュエーションで選ぶのがこれからだと思います。

ワインと共に食卓を囲む写真

それでは、この記事を読んでくださっているワインラヴァーの方へメッセージをお願いいたします。

アンドレアMW たくさんの好奇心をワインに対して持ってほしいです。色々調べてみたり、口の中に含んだときにワインを観察したり、料理との組み合わせを色々と試したり。ワインはワインを知っている人だけのものではない。ワインも生活の一つとして、文化の一つとして楽しんでいただきたいです。

マスタークラス・テイスティング
次の記事へ続く

サイン入りスペシャルワイン

サインをするアンドレアMWの写真
商品画像

ベルタ―二 アンドレアMWのサイン入り!アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ・クラッシコ 2012 限定3本 /750ml

18,000円 (税込)

商品コード:7155_3-5

完売いたしました

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